「得体の知れない生物」だと、思っていた。──僕は知らないまま、人を決めつけていないだろうか?
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mermaid 代表
公開日:2026年9月5日
先日、半休をいただいて、
一人で、なんばマルイの映画館に行ってきました。
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』
きっかけは、
チャットレディのある女性と、話していた時のことでした。
心斎橋本店には、
普段からきれいにネイルをされている方が、
たくさんおられます。
でも、その日。
ふと、その方の指先を見ると、
爪の先に、
何だか、得体の知れない生物が、いたんです。
ん?
これ、何だろう。
た、たぬき…?
疑問に思いながら、視線を外すと、
その女性のカバンにも、
同じ生物が、ぶら下がっていました。
「これ、何なの?」
聞いてみると、
「ちいかわですよ」
ニコっとして、
少し嬉しそうに、教えてくれました。
“ちいかわ”が好きなこと。
映画を観に行ったこと。
大人でも、楽しめること。
僕には、
まったく縁のない世界。
名前も、人気があることも、
なんとなくは、知っていました。
でも、それだけ。
だったら、いっそ。
自分の目で、確かめてみよう。
そう思って、
映画館へ向かいました。
これから観に行かれる方も、おられると思うので、
今日は、ネタバレしない範囲で。
観て、僕なりに感じたことを、
お話ししてみたいと思います。
後ろの隅で、こっそり
映画館に着くと、
周りは、カップルや、
小さなお子さんを連れた、ご家族ばかり。
僕はというと。
仕事前だったので、
いつも通りの、上下黒のセットアップ。
少し、場違いに感じました。
だから、後ろの隅っこの席で、
こっそり、観ることにしました。
でも、席にたどり着くまでにも、
ひと苦労ありました。
チケットを買おうと、
列のいちばん後ろに、並びます。
やっと、僕の番。
そう思ったら――
そこは、ドリンクやフードの、
自動券売機でした。
とりあえず、コーラを一杯だけ買って。
もう一度、
チケットの列に、並び直します。
でも、次に待っていたのも。
使い慣れない、
タッチパネル式の券売機。
ちいかわ。
ちいかわ。
ちいかわ…。
指で画面をなぞりながら、探すのですが、
なかなか、見つけられない。
後ろには、人が並んでいます。
つくづく、
自分が嫌になる瞬間でした。
「得体の知れない生物」だと思っていた
やっとの思いで席に着いて、
映画が始まりました。
観ながら、ふと、思ったんです。
今までの、僕は。
あの、爪の先にいた生物を、
「たぬき…?」
「得体の知れない、何か」
「子どもが喜ぶキャラクター」
勝手に、そう決めつけていました。
でも、本当は。
大人が観ても、楽しめる。
考えさせられる部分だって、ある。
一つの、ちゃんとした世界でした。
知らなかったのは、僕の方。
知らないだけで、
勝手に、決めつけていた。
そして、この
「知らないまま、決めつける」が――
実は、この映画そのものの、
大事なところ、だったんです。
知らなければ、簡単に決めつける
物語は、最初。
「怖いものを、倒す」
そういう、分かりやすい話に見えます。
子どもたちは、
きっと、それで楽しめます。
「怖かった!」
「あのキャラ、面白かった!」
それで、十分だと思います。
でも、大人が観ていると。
途中から、少しずつ、
それぞれの”事情”が見えてきます。
悪いものだと思っていた側にも、
事情がある。
守る側だと思っていた側にも、
事情がある。
それに気づいた瞬間。
さっきまで見ていた出来事の意味が、
がらっと、変わってしまう。
「悪いのは、こいつだ」
最初は、そう思っていたのに。
知れば知るほど、
「これは、そんな単純な話じゃないな」
そう、思わされる。
僕も同じです。
知らないことが多いほど、
どちらが悪いのか、
簡単に、決めつけてしまいそうになる。
でも、知れば知るほど、
どちらが正しいのか、分からなくなる。
無意識に「正しい側」に立ってしまう
この映画で、
僕がいちばん、“こわい”と思ったこと。
それは、怖いキャラクターでも、
悲しい出来事でも、ありませんでした。
「知らないままなら、自分は、簡単に”正しい側”に立ててしまう」
その、“こわさ”でした。
これは、
映画の中だけの話じゃありません。
片方の話だけを、聞けば、
「その人、最低だな」
そう、思ってしまう。
でも、もう片方の話を聞くと。
「あれ…?」
となる。
さらに、その奥の事情まで知ると、
「そんなに簡単に、決められる話じゃない」
「どちらが正しいのか、分からない」
そう、変わっていく。
知らないうちは、
僕はいつも、
正しい側にいる気がしてしまう。
でも、本当は、
ただ、知らなかっただけ。
なのに僕は――
また、決めつけてしまう。
僕が知っているのは、ほんの一部
心斎橋本店では、
毎月、80名ほどの女性がお仕事をされています。
僕は毎日、
いろんな方と、お話をします。
その日に知ったこと。
話して感じた、雰囲気。
“こういう人かな”と、
僕なりに思った、人柄。
でも、
結局は、
僕が、僕の中で感じ取っただけのものです。
本当の姿は、
きっと、もっと奥にあります。
抱えていること。
悩んでいること。
僕には、
見せない一面。
これからも、
見せることのない一面。
僕の知らない顔が、
どの女性にも、あるはずです。
知らないことのほうが、
たぶん、ずっと多い。
知っていることのほうが、
少ないはずなのに。
「この人は、こういう人」
いつの間にか、
僕の中で、
勝手なイメージを作ってしまう。
それって本当に、危ういことだと思います。
だから、
全部を知ることは、できなくても、
知ろうとすること。
知りたいと、思う気持ち。
それだけは、
これから先も、忘れたくない。
一本の映画から、
改めて、強く感じました。
怖がりの、強さ
最後に、もう一つ。
観終わってから、
考えていたことがあります。
主人公の、“ちいかわ”です。
これまでの“ちいかわ”を、
僕は、何も知りません。
たった90分、観ただけの僕が言うのは、
違うかもしれませんが、
僕が観た“ちいかわ”は、
のほほんとしていて。
優しくて。
少し、泣き虫で。
怖がり。
いわゆる、
「勇敢な主人公」とは、違って見えました。
でも、
最後の、いちばん大事なところで。
“ちいかわ”は――
踏みとどまった。
この映画でいちばん「強い」のは、
力の強い、誰かではなく、
この“ちいかわ”、なんじゃないか。
観ながら、
そう感じていました。
あの場面で、
「僕だったら、どうしただろう」
今も、その問いが、
僕の中に残っています。
得体の知れないたぬきだと、
思っていたのに。
ここまで考えさせられるなんて、
想像もしていませんでした。
家族連れや、カップルに囲まれて、
一人で、こそっと潜り込んで、
それでも、
行ってみて、よかった。
教えてくれた女性に感謝しないと、です。
ありがとう。